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東京事変 それは現代のモンスターバンド

東京事変の楽しみ方を徹底解説します

東京事変とは?──結成・再生・現在地

東京事変(Tokyo Incidents)は、椎名林檎を中心に2004年に本格始動したロックバンド。2004年9月にデビューシングル「群青日和」を発表、2012年2月29日に一度活動を終了したのち、2020年1月1日に電撃的に再始動し、配信シングル「選ばれざる国民」をリリースしました。続いて4月にEP『News』、2021年6月9日にはフルアルバム『音楽(ミュージック)』を発表。現在も精力的に活動しています。

「再生」初動の2020年ツアー名が“News Flash(ニュース・フラッシュ)”だったのも象徴的。情報の奔流の時代に、バンド自身がニュースになるスピードと衝撃を体現してみせました。ツアーは2012年の解散日(2月29日)に再スタートを切る演出で、物語性まで含めて“バンドは作品”という姿勢が徹底しています。

メンバー紹介と役割の妙

現体制の5人は、椎名林檎(Vo, G)浮雲=長岡亮介(G, Cho, Rap)伊澤一葉(Key, G, Cho)亀田誠治(B)刄田綴色(Dr)。初期にはギターの昼海幹音、鍵盤のH ZETT Mが在籍していましたが、2005年に現在の布陣へ。各人が作曲・アレンジに深く関わり、曲ごとに作家性が入れ替わる“合議制の化学反応”が、東京事変サウンドの根幹です。

ディスコグラフィの概観:『教育』(2004)、『大人』(2006)、『娯楽』(2007)、『スポーツ』(2010)、『大発見』(2011)、再生後の『音楽』(2021)。映像作品やEPを含むと更に厚みが出ますが、スタジオ作だけを見ても、ポップと前衛の針を行き来しながら進化してきたことがわかります。

「楽曲のすごさ」を具体例で味わう

東京事変の真骨頂は、「耳なじみの良さ」と「作りの緻密さ」の両立にあります。以下、代表的な楽曲を“聴きどころ”付きで解説します。

1)「修羅場」──ドラマ主題歌としての強度と構成美

2005年のシングルで、テレビドラマ『大奥〜華の乱〜』の主題歌。重心の低いベースリフと、キメで引き締めるドラム、緊張感のあるコード運び。タイアップ文脈でも映える“主旋律の力”と“編曲の締まり”が同居し、ライブ定番としても磨かれてきた一曲です。

2)「OSCA」──作曲:浮雲、〈歌う人格〉を拡張する

2007年、『娯楽』期の先行シングル。メンバー全員が作曲できるという東京事変の強みを象徴する一曲です。作曲を担当したのはギタリストの浮雲で、曲の骨格からメロディの跳躍感、硬質なビートの刻みまで“作家の個性”を前面に。椎名林檎が自作以外を歌うことで声のキャラクターが拡張され、バンドとしての可塑性を証明しました。

3)「キラーチューン」──スウィングの体幹をポップへ翻訳

同じく『娯楽』期のシングルで、作曲はキーボーディストの伊澤一葉。スウィング・フィールをポップロックへ丁寧に移植し、ホーン的な鍵盤の合いの手と、コーラスの配置で前のめりの推進力を作る。曲名に違わぬ“キラーチューン”ぶりは、アレンジの緻密さが支えています。

4)「能動的三分間」──“新機軸”を宣言するメソッド曲

2009年に発表されたシングルで、バンドが『娯楽』以後の新しい作法を試す“練習曲”として位置づけられた経緯が公言されています。ファンク寄りの16ビート、分業化されたフレーズ、ボーカルのリズム運びなど、以降の展開を予告する設計図のような一曲。

5)「空が鳴っている」──タイアップでも崩れない〈らしさ〉

江崎グリコ「Watering Kissmint」CM楽曲(両A面シングル)。作曲はベーシスト亀田誠治で、クールなギター・イントロとダークな情感が同居。商業文脈に置いても、安定にも奇抜に走らず“東京事変らしいバランス”を保てる筆致を示しました。

6)『音楽(ミュージック)』──第二期の名刺代わりとなる到達点

再生後初のフルアルバム(2021)。各メンバーの作曲が並び、録音〜ミックスまで“アンサンブルの密度”を高める方向で統一。Billboard Japan/オリコンでも上位にランクインし、ハイレベルな演奏美とポップの求心力を両立した作品として評価されました。

7)再生の狼煙「選ばれざる国民」とEP『News』

2020年元日に突然配信された「選ばれざる国民」は、サウンドもメッセージも“事変が帰ってきた”を明快に告げる一手。各メンバー作曲の新曲を収めたEP『News』とあわせて、第二期・東京事変の作家性が可視化されました。

どこから聴く?おすすめ導線

まずは「群青日和」→「修羅場」→「OSCA」→「Killer-tune」→「能動的三分間」で“第一期の骨格”を掴む。その後、「空が鳴っている」→『大発見』でタイアップ・文脈下の強度をチェック。最後に『音楽』で第二期の現在地へ——この順なら、音色・ビート・作曲者の回路が立体的につながって聴こえます。

「歌もの×アンサンブル」の妙味を味わいたい方は、ベースとドラムの“置き”に注意を。亀田の明確な音価設計と刄田のスネア位置で、曲ごとの前後ノリが繊細に切り替わります。鍵盤の伊澤はしばしば“対旋律の主役”を担い、浮雲はコードの張力と異物感で楽曲の輪郭をシャープにする——この役割分担が、事変のアレンジ快楽の正体です。

まとめ:ポップの器に実験精神を詰め込む怪物

東京事変は、キャッチーな歌と高度なアレンジ、圧倒的な演奏力を“同時に”成立させる稀有なバンドです。メンバーそれぞれが書き手であり、プレイヤーであり、プロデューサーでもある——その総合力が、J-POPの文脈で“実験が売れる”稀少なケースを何度も実現してきました。再生以降もアティテュードは不変。だからこそ、私は彼らをこう呼びたくなります。現代のモンスターバンド、と。

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