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緊張を味方につけて最高の歌を歌おう

カラオケでマイクを握った瞬間、あるいは友人の結婚式の余興でステージに立った瞬間。さっきまでは「よし、やるぞ!」と意気込んでいたはずなのに、いざ伴奏が始まった途端に心臓が早鐘を打ち、喉がキュッと締まり、自分の声とは思えないほど震えてしまった……。
そんな経験、みなさんにも一度はあるのではないでしょうか。
「練習では完璧だったのに!」
「どうして本番に限ってこうなるの?」
後から襲ってくるのは、恥ずかしさと悔しさですよね。実はこれ、あなただけじゃありません。プロの歌手であっても、本番前には手足が震えるほどの緊張に襲われる人はたくさんいます。むしろ、「緊張しない人」の方が珍しいと言ってもいいくらいです。
でも、もしその「緊張」を消そうとするのではなく、「味方」につけることができたなら? 震える声をコントロールし、むしろそのドキドキを感動に変えることができたなら?
今回は、ボイストレーニングの視点と、メンタルコントロールの両面から、「あがり症」との上手な付き合い方について、じっくりとお話ししていきたいと思います。
目次
なぜ声は震えるの? 身体の中で起きている「緊急事態宣言」

まずは、敵を知ることから始めましょう。といっても、緊張は敵ではないのですが、身体のメカニズムを知っておくと冷静になれます。
なぜ、緊張すると声が震えるのでしょうか? 「メンタルが弱いから」ではありません。これは人間が太古の昔から持っている、非常に優秀な生存本能のせいなのです。
想像してみてください。あなたがサバンナを歩いていて、突然目の前にライオンが現れたとします。あなたの脳は瞬時に「危険だ! 戦うか、逃げるか選べ!」と命令を出します。これを「闘争・逃走反応」と言います。
この時、身体の中ではアドレナリンというホルモンが大量に分泌されます。アドレナリンが出ると、心拍数が上がり、筋肉がギュッと収縮して、いつでもダッシュで逃げられるように準備を整えます。
さて、現代に戻りましょう。人前で歌うという状況を、脳は「ライオンに出会った」のと同じくらいのストレス(危機的状況)だと勘違いしてしまうことがあるのです。たくさんの視線=敵の視線、と誤認するわけですね。
そうすると、身体はどうなるか。
まず、全身の筋肉が硬直します。歌うために最も重要な「横隔膜(おうかくまく)」や「喉周りの筋肉」も例外ではありません。
横隔膜は呼吸をコントロールするポンプのような役割をしていますが、ここが緊張でガチガチに固まると、深く息を吸うことができなくなります。結果、呼吸が浅く、早くなります。
呼吸が浅くなると、息を吐く量(呼気)が安定しません。歌声というのは、吐く息に乗って声帯が振動することで生まれますから、その土台である「息」がガタガタ震えていれば、当然そこから出る「声」も震えてしまうわけです。
さらに、喉の筋肉が締まることで、声帯が必要以上に強く閉じ合わさり、スムーズな振動ができなくなります。これが「声がひっくり返る」「高音が出ない」原因です。
つまり、「声が震える」というのは、あなたが下手だからではなく、あなたの身体が優秀すぎて「危機に対して全力で身構えている」証拠なのです。
「失敗してはいけない」の呪縛を解くメンタルセット

身体の仕組みがわかったところで、次は「心」の話をしましょう。
緊張を極限まで高めてしまう最大の原因、それは「完璧主義」です。
「音程を外しちゃいけない」
「歌詞を間違えたら笑われる」
「あそこの高音、絶対に出さなきゃ」
このように自分自身にプレッシャーをかければかけるほど、脳は「失敗=死」のような強烈な信号を受け取り、先ほど説明した「ライオン遭遇モード」を加速させてしまいます。
でも、聴衆は、あなたが思っているほど、あなたの歌の細かいミスなんて気にしていません。
聴いている人たちは、審査員ではありません(オーディションなら別ですが、カラオケや余興なら絶対に違います)。彼らは「楽しい時間を過ごしたい」「あなたの歌で盛り上がりたい」と思っているだけで、音程のズレやリズムのヨレを減点法でチェックしようなんて、これっぽっちも思っていないのです。
むしろ、歌っている本人が「間違えちゃいけない…」と眉間にシワを寄せてガチガチになっている姿を見る方が、聴いている側も緊張してしまいます。
逆に、歌詞を少しくらい間違えても、音を外しても、ニコニコと楽しそうに歌っている人を見ると、聴いている方もなんだか楽しい気分になるものです。
ですから、「上手く歌おう」とするのをやめてみましょう。
代わりに、「この曲の良さを伝えよう」「目の前の人をちょっと楽しませよう」という方向に意識をシフトしてみてください。
「自分」に矢印が向いていると(どう見られているか、上手くできるか)緊張しますが、「相手」や「曲」に矢印を向けると(この歌詞いいよね、楽しんでね)、不思議と身体の力みは抜けていくものです。
「失敗しても、死ぬわけじゃないし、まあいっか!」
この「開き直り」こそが、最強のメンタルセットなのです。
本番直前! トイレや楽屋でこっそりできる「緊張ほぐし術」
精神論だけではどうしても収まらない震えもありますよね。そんな時に使える、物理的に身体の緊張を解くテクニックをご紹介します。どれもトイレの個室や、舞台袖のちょっとしたスペースでできるものばかりです。
1. 「ため息」呼吸法
緊張している時、人は無意識に息を「吸おう、吸おう」としてしまいます。でも、肺の中に空気が残っている状態で無理に吸おうとすると、過呼吸気味になり余計に苦しくなります。
大事なのは「吐く」ことです。
まず、口から「はぁ〜〜〜……」と、これ以上吐けないというところまで息を吐き切ってください。身体の中の悪いものを全部出し切るイメージです。
吐き切ったら、自然に鼻から息が入ってくるのを待ちます。これを3回繰り返してください。
特に、吐く時に肩の力をダラリと抜くのがポイントです。副交感神経(リラックスする神経)は息を吐く時にスイッチが入ります。焦ったら、まず「ため息」です。
2. 首と肩の「ストン」体操
緊張で一番固まるのは首と肩です。ここが固まると声帯が締め付けられます。
(1) 息を吸いながら、両肩をグーッと耳に近づけるように持ち上げます(力んでOK!)。
(2) 限界まで上げたら、息を一気に「ハッ!」と吐きながら、肩を「ストン!」と落とします。
あえて一度強く力むことで、その反動を利用して脱力させるテクニックです(筋弛緩法といいます)。これも数回やると、驚くほど肩が軽くなります。
3. 唇プルプル(リップロール)
もし少し音を出しても大丈夫な環境なら、唇を閉じて息を吐き「プルルルル」と震わせる「リップロール」がおすすめです。
これは唇や表情筋の力を抜かないとできない動作なので、強制的にリラックス状態を作れます。また、横隔膜のウォーミングアップにもなるので一石二鳥です。音が気になる場合は、音程を付けずに息だけで「プスプス」と唇を鳴らすだけでも効果がありますよ。
震えてもいい。緊張感こそが「感動」を生むスパイスになる

最後に、緊張に対する考え方を少しポジティブなものに変えて終わりましょう。
ここまで「緊張をほぐす方法」をお伝えしてきましたが、実は「緊張感ゼロ」の状態が良いパフォーマンスを生むかというと、そうとも限りません。
家で一人でお風呂に入りながら歌っている時はリラックスしていますが、誰かを感動させるような熱量があるかというと、ちょっと違いますよね。
適度な緊張感は、集中力を高め、脳を覚醒させます。あの「ドキドキ」という心臓の鼓動は、全身に血液を送り出し、「さあ、これから凄いことをやるぞ!」というエネルギーの現れなんです。
プロの歌手のライブを観ていて、バラード曲などで歌手の声が感極まって少し震えたり、息が詰まったりする瞬間に、心を揺さぶられたことはありませんか?
あれは、技術的な完璧さを超えたところにある「感情のゆらぎ」です。
あなたの声が緊張で震えてしまったとしても、それはあなたがその場に真剣に向き合っている証拠であり、その必死さや一生懸命さは、必ず聴き手の心に届きます。
AIが歌う正確無比な歌にはない、人間だけが持つ「弱さ」や「揺らぎ」こそが、音楽のエモーショナルな部分を形作るのです。
だから、「震えちゃダメだ」と自分を責めないでください。
「お、震えてるな。今、私は感情が高ぶっているんだな。このドキドキを歌に乗せてやろう」
そう思えた瞬間、あなたの歌は単なる「音の羅列」から、誰かの心に届く「メッセージ」へと変わります。
緊張してもいいんです。震えてもいいんです。大切なのは、その震える声で、最後まで想いを届けようとする姿勢なのですから。
まとめ:緊張はあなたの敵じゃない
いかがでしたでしょうか。
人前で歌う時の「震え」や「緊張」は、身体の正常な反応であり、決して恥ずかしいことではありません。
1. 緊張の正体を知り(ライオンと戦う準備!)、
2. 「失敗してもいいや」と開き直り、
3. 直前に深呼吸やストレッチで身体を緩め、
4. そのドキドキをエネルギーに変える。
このステップを覚えておけば、次のカラオケや発表会は、今までよりも少しだけ景色が違って見えるはずです。「完璧」を目指さず、「あなたらしい」歌を歌ってくださいね。
それでもやっぱり、「どうしても声が出しづらい」「もっと根本的に自信をつけたい」と思うこともあるかもしれません。そんな時は、プロの力を借りてみるのも一つの近道です。
自分の声の出し方の癖を知り、正しい呼吸法や発声を身につけるだけで、「緊張していても声が出る」という強固な土台を作ることができます。「声が出る」という事実は、何よりも強い「自信」になりますから。
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