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2025.11.06
コラムお風呂で歌うと上手く聞こえるのはなぜ?
お風呂でついつい歌ってしまう理由とは

なぜお風呂で歌いたくなるのか
誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。
湯気が立ちこめる浴室で、つい口ずさんだ鼻歌が——なぜか妙に上手く聞こえる。
「えっ、自分こんなに歌うまかったっけ?」と、一瞬だけアーティスト気分に浸った人も多いはずです。
実は、これは錯覚でも夢でもありません。お風呂という空間が、あなたの声を“いい感じに加工してくれている”のです。
その正体は、音が壁や天井にぶつかって跳ね返る「反響(リバーブ)」です。
お風呂の“魔法”=反響(リバーブ)の正体
まずは、「反響(はんきょう)」という現象をシンプルに説明しましょう。
あなたの声が空気を振動させ、その振動(=音)が壁・床・天井などにぶつかると、跳ね返って再び耳に届きます。これが「反響」です。

特に、お風呂場は
- ・タイルやユニットバスなど硬い素材でできている
- ・床から天井までの距離が狭く、音がすぐ壁に当たって戻ってくる
- ・家具や布など音を吸収するものがほとんどない
という条件が揃っています。そのため、声を出すと多方向から音が跳ね返り、あっという間に部屋全体が「スピーカー」のような状態になるのです。
この「反響」がたっぷり加わった声は、実際の生声よりも
- ・音が長く伸びる(サスティン)
- ・声の輪郭が柔らかくなる
- ・音のズレやピッチの甘さが目立ちにくい
といった効果を生みます。つまり、お風呂場は「天然のボーカル・エフェクト空間」なのです。
プロのレコーディングでも、ボーカルの生声にリバーブを加えるのは常識。お風呂はそれを物理的にやっている、いわば“自然のスタジオ”というわけです。
リバーブは音楽制作でも重要なエフェクト
反響(リバーブ)は、単に「お風呂でいい感じになる」だけでなく、実は音楽制作でもとても大事なエフェクトです。
例えば、スタジオ録音された歌声は、基本的に「デッド」と呼ばれる反響の少ない無音空間で録られます。そのままだと声が“カラッ”として無機質に聴こえるため、録音後のミックスで人工的にリバーブを加え、自然な空間の響きを再現するのです。
ミックスで使うリバーブには、いくつか種類があります:
- ・ルーム(Room):小さな部屋のような自然な響き
- ・ホール(Hall):コンサートホールのような壮大な響き
- ・プレート(Plate):金属板を使った独特の余韻(60〜70年代のレコーディングでよく使用)
- ・スプリング(Spring):ギターアンプなどでよく使われる“ビヨン”とした響き
このように、反響の加え方ひとつで、楽曲の印象は大きく変わります。
お風呂で歌うと上手く聞こえるのは、いわば「ホール・リバーブを強めにかけた状態」だからです。プロがやっていることを、お風呂は自然とやってくれているわけですね。
でも録音はNG!お風呂録音がモワモワする理由
ここまで読むと「じゃあ、お風呂で録音すれば簡単に上手い音が録れるんじゃない?」と思うかもしれません。
……ですが、それは大きな落とし穴です。
実際にスマホなどでお風呂録音をしてみると、
- 声の輪郭がぼやける
- 反響音が主張しすぎて歌がこもって聞こえる
- 細かい音程や表現がつぶれてしまう
といった問題が起こります。これは、リバーブが「適量」なら心地よいのに対し、お風呂は反響が過剰だからです。
プロのミックスでは、原音とリバーブを別々に録ってバランスを調整しますが、お風呂はそれができません。反響がマイクにも一緒に録音されてしまい、編集のしようがないのです。
そのため、「お風呂での歌声」と「お風呂録音の音質」にはギャップが生まれます。自分で聞くと気持ちいいのに、録音を再生したら「なんかモワモワしてる……」となるのはこのためです。
まとめ:お風呂は練習には◎、録音には×
お風呂で歌うと上手く聞こえる理由は、空間の反響(リバーブ)によって声が心地よく響くからです。
プロの音楽制作でもリバーブは重要な要素で、うまく使えば声が魅力的に聞こえる一方、やりすぎるとモワモワとした聞きづらい音になります。
つまり、
お風呂=気持ちよく歌える天然リバーブ空間
だけど、
お風呂=録音には向かない過剰な反響空間
というわけです。
お風呂は気軽な発声練習の場としてはとても優秀です。鼻歌を歌ったり、高音を出す練習をしたり、テンションを上げるにはぴったりの場所。
でも、本格的に歌を録音したい場合は、反響の少ない静かな部屋を選び、必要に応じて後からリバーブを“加える”のが鉄則です。
次にお風呂で歌うときは、「この響きはリバーブ効果なんだな〜」とちょっと意識してみてください。きっと、今までとは違う耳で自分の声を楽しめるはずです。