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ハモリやデュエットで「相手も自分も際立つ」方法

【目次】ハモリとデュエットの極意

カラオケボックスの狭い空間で、あるいは煌びやかなライブステージの上で。一人が歌うメインメロディに対し、もう一人の声が重なった瞬間、それまで平面的だった音楽が急に奥行きを持ち、立体的に浮かび上がってくる——。
「ハモる」というのは、単に歌を歌う以上の、もっと根源的な「音の対話」です。 誰かと声を合わせることは、自分の呼吸を相手に預け、相手の呼吸を自分の中に受け入れる作業でもあります。一人で歌っている時には決して味わえない、あの脳が痺れるような、あるいは全身の細胞が共鳴するようなゾクゾク感。それは、音楽が持つ最も原始的で、かつ最も贅沢な楽しみの一つだと言えるでしょう。
しかし、いざ自分がその「ハモリ」の輪に加わろうとすると、急にハードルが高く感じられてしまうものです。「自分は音感が良くないから」「主旋律につられてしまうのが怖い」「そもそもどうやって音を探せばいいのか分からない」……。そんな風に二の足を踏んでしまうのは、非常にもったいないことです。
実は、ハモリやアンサンブルにおいて最も大切なのは、特別な「絶対音感」ではありません。大切なのは、相手の声を感じ、自分の声をそこにどう配置するかという「感覚のデザイン」なのです。今回は、音楽の専門知識がない方でも直感的に理解できる、ハモリの極意を紐解いていきます。この記事を読み終える頃には、あなたはきっと、誰かの歌声に自分の声をそっと重ねてみたくてたまらなくなっているはずです。
多くの人は、「ハモる=メインより3度上(あるいは下)の音を正確に歌うこと」だと考えがちです。たしかに理論上はその通りなのですが、数値上の音程が合っているだけでは、聴き手の心に響く「美しいハモリ」にはなりません。
声というものは、単一の「音」ではなく、さまざまな「成分」の集合体です。 ハスキーな成分、鋭く刺さるような成分、柔らかく包み込むような成分。これらが相手の声と「どう混ざるか」を意識することが、ハモリの真髄です。
音楽の専門用語ではこれを「倍音(ばいおん)」と呼んだりもしますが、難しい理屈はさておき、「声のパズルのピースを合わせる」ようなイメージを持ってみてください。相手の声の凹んでいる部分に、自分の声の凸の部分をはめ込んでいく。 一人が力強く歌っているなら、もう一人は少しエッジを削った丸い声で支える。あるいは、二人の声の質感をあえて極限まで近づけて、一人の声が二重に聞こえるような「ユニゾン」に近いハモリを目指す。
「音程」という縦の線だけでなく、「声の質感」という横の広がりを意識する。この視点を持つだけで、あなたのハモリは単なる「伴奏」から、音楽そのものを彩る「色彩」へと変わっていくのです。

二人の声を一つに溶け合わせる魔法、それが「ブレンディング(Blending)」です。コーヒーのブレンドと同じく、個性の異なる豆を混ぜて、新しい風味を作り出す作業を指します。
合唱の世界や、プロのバックコーラスの現場で最も重視されるこの技術。習得するための最大のコツは、実は「歌うこと」よりも「聴くこと」にあります。
① 意識の比率を変える
ハモリが上手くいかない人の多くは、自分の声が合っているかどうかを確かめるために、自分の声ばかりを聴いています。しかし、これではブレンディングは起きません。 理想の比率は、【相手の声:7割、自分の声:3割】です。相手の声の響きを全身で浴びながら、その響きの波の中に、自分の声を優しく滑り込ませるような意識を持ってみましょう。
② 「母音」の形をコピーする
声のブレンディングにおいて、最も強力な武器になるのが「母音(あ・い・う・え・お)」の形を合わせることです。 たとえば、相手が「あー」と歌っているとき、口を横に開いて明るく発音しているのか、それとも縦に開いて深く発音しているのか。この「口の形」と「響きの位置」を相手にそっくりそのまま寄せてみてください。 母音の質感が揃うと、音程が多少揺れていても、不思議と声は綺麗に溶け合って聞こえます。
③ 立ち上がりのタイミングを盗む
言葉を出す瞬間、つまり「出だし」のタイミングを0.01秒の狂いもなく合わせる。これもブレンディングの重要な要素です。 相手が息を吸う音(ブレス)を自分の耳でしっかりキャッチし、一緒に息を吸い、一緒に声を出す。このシンクロ率が高まれば高まるほど、聴いている人は「二人の声が一本の太い線になった」と感じるのです。
ハモリに挑戦する際、最大の敵は「主旋律につられること」ですよね。隣で気持ちよくメインを歌われると、脳が勝手にそちらのメロディを「正解」だと判断し、自分の声をそちらへ引き寄せてしまいます。
これを防ぐために、「音程を自力で保持しよう」と踏ん張るのは逆効果です。頑張れば頑張るほど喉が締まり、余計に音程が不安定になります。そこで、発想を逆転させてみましょう。
「相手の声を、自分の座布団にする」というイメージです。
ハモリの音というのは、決して空中を浮遊している独立したものではありません。常にメインメロディという「土台」の上に成り立っています。 ですから、主旋律を「自分を邪魔する音」ではなく「自分を支えてくれる床」だと考えてみてください。
たとえば、相手が低い音を出し、自分が高い音でハモる場合。相手の低い響きが、しっかりとした畳のような座布団になって自分の下に敷かれていると想像します。自分はその座布団の上に、ふんわりと腰を下ろすだけ。相手の音が上がれば、自分の座布団も一緒に上がる。相手が下がれば、座布団も下がる。
「自分の力で飛び続ける」のではなく「相手という魔法の絨毯に乗せてもらう」。この感覚を掴むと、つられることへの恐怖心が消え、むしろ相手のメロディが動くことが楽しくなってきます。主旋律との「距離感」を一定に保つことだけを意識すれば、あなたの音程は驚くほど安定するはずです。
ハモリを成功させるために、最後に必要となるのが「名脇役としてのマインドセット」です。 どれほど歌唱力があっても、ハモリの人が主役のように自己主張しすぎては、音楽全体のバランスが崩れてしまいます。相手を輝かせることで、結果として自分自身の価値も高まる——。そんな美しいアンサンブルのための心得を整理しておきましょう。
・子音を少しだけマイルドにする
日本語の「K」「S」「T」などの子音(か、さ、た行など)は、意外と耳に強く刺さります。ハモリの人がこれを強調しすぎると、言葉が渋滞して聞こえてしまいます。ハモリの時は、子音を少しだけソフトにし、母音の響きを豊かに保つことで、メインの歌詞がよりクリアに届くようになります。
・ビブラートの幅をコントロールする
メインの人がノンビブラートでまっすぐ歌っているのに、ハモリの人が細かく震わせていたら、響きが濁ってしまいます。基本は相手の揺れ方に合わせるか、あるいは自分はあえて揺らさずに「まっすぐな壁」のような音で支えてあげるのがプロのテクニックです。
・語尾の「消え方」を合わせる
歌の終わり際、フッと声を抜くタイミング。これが一致すると、聴き手は深い満足感を覚えます。相手がどれくらいの余韻を持って音を切るのか、その「残り香」まで一緒に吸い込むような気持ちで歌ってみましょう。
「奉仕」の精神を持って相手を支える。一見すると地味な役割に思えるかもしれませんが、実は主旋律の何倍も音楽的なセンスが問われる、最高にクリエイティブなポジションなのです。
誰かとハモることは、自分の世界を広げることです。 一人の声は一本の糸に過ぎませんが、二つの声が重なれば、それは美しい織物になります。最初はつられてしまったり、音が合わなかったりするかもしれません。しかし、今回お話しした「混ぜる意識」や「座布団の感覚」を少しずつ試していくうちに、ある時ふと、二人の声が溶け合って「一つの巨大な楽器」になったような感覚が訪れるはずです。
その瞬間の喜びは、一度知ってしまうと病みつきになります。 音楽は、競い合うものではなく、響き合うもの。あなたの隣で歌っている人を世界で一番輝かせるために、自分の声をどう添えるか。そんな優しい気持ちで歌に向き合えたとき、あなたの歌声は、今までで最も魅力的な輝きを放ち始めるでしょう。
「自分のハモリが正しいのか客観的に見てほしい」「つられないための筋トレならぬ『耳トレ』をしたい」——そんな風に感じたら、ぜひボイストレーニングの扉を叩いてみてください。プロの講師と一緒に声を重ねる経験は、あなたの音楽人生にとって、かけがえのない財産になるはずです。
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