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2025.12.06
コラム動物の名前がタイトルになっている曲

【目次】
古くから、人間は言葉にできない感情や、自分たちの社会の有様を、人間以外の生き物に託して表現してきました。たとえば「ライオン」なら勇気や王者の風格、「猫」なら気まぐれさや愛らしさ、といった具合に、動物の名前ひとつでパッとイメージが湧きますよね。
しかし、最近のJ-POPシーンで描かれる「動物たち」は、単なるキャラクターとしての登場にとどまりません。もっと哲学的で、時には少しシニカルで、そして何より人間臭い。
今回は、そんな「動物の名前がタイトルになっている名曲」たちをピックアップして、その奥に隠されたメッセージや、ボーカル表現の面白さについて、音楽用語をなるべく使わずに紐解いていきたいと思います。
コーヒーでも飲みながら、ゆっくりとお付き合いください。
まず一曲目にご紹介するのは、今や日本を代表するユニットとなったYOASOBIの「ツバメ」です。
この曲、NHKの子供向け番組のプロジェクトソングとして作られたものなんですが、ただの「子供向けの可愛い曲」だと思って聴くと、良い意味で裏切られます。
楽曲の原作となったのは、『小さなツバメの大きな夢』という物語。主人公は、街の上空を飛び回る一羽のツバメです。
人間たちが営む街を空から見下ろしているツバメは、きらびやかな街の明かりだけでなく、その影にある悲しみや不平等も見えてしまう。
「僕にできることは何だろう?」と問いかけながら、小さな幸せを運ぼうとするその姿は、現代社会を生きる私たち自身の葛藤とも重なります。
ボーカルのikuraさんの歌声に注目してみてください。
彼女の歌声は、まるで本当に空を滑空しているかのような、透明感と軽やかさがあります。決して声を張り上げたり、感情を押し付けたりしない。
あくまで「語り部」としてのツバメになりきっているような、優しく寄り添うトーンが印象的です。
また、サビ部分で子供たちのコーラス(ミドリーズ)が入ってくる構成も素晴らしいですね。ikuraさんの透き通った声と、子供たちの無垢で力強い声が重なるとき、理屈抜きで「未来を守りたい」という温かい気持ちにさせられます。
「SDGs」という少し難しそうなテーマを、ツバメというフィルターを通すことで、こんなにも心にスッと入ってくるポップスに仕上げる手腕は、さすがとしか言いようがありません。
続いては、米津玄師さんの「Flamingo」です。
タイトルはご存知、鮮やかなピンク色が特徴的な鳥、フラミンゴです。
でも、この曲から感じるのは、動物園で見る優雅な姿というよりは、どこか怪しげで、粘り気のある雰囲気ではないでしょうか。
フラミンゴという鳥は、一本足で立っていますよね。あの不安定でユラユラした様子を、この曲のリズムやメロディは見事に表現しています。
ジャンルで言うと「ファンク」という、踊れる音楽の要素が強いのですが、そこに日本民謡のような「こぶし」を効かせた歌い方が乗っかることで、唯一無二の「米津節」が炸裂しています。
特に面白いのが、歌詞の語感です。
歌詞カードを見ずに聴いていると、日本語なのか呪文なのか分からなくなるような、言葉遊びがふんだんに盛り込まれています。そして、時折入る咳払いのような音や、喉を鳴らすような声。
これらは、フラミンゴの滑稽さや、叶わない恋に焦がれてジタバタしている人間の「情けなさ」を表現しているようにも聞こえます。
「もっと単純に愛してくれればいいのに」と思いながらも、プライドや照れが邪魔をして素直になれない。そんな、人間関係のドロっとした部分を、あえて「フラミンゴ」という派手な鳥に例えるセンス。
美しくあろうとすればするほど、どこか滑稽に見えてしまう悲哀が、この曲の中毒性を高めているのです。
カラオケで歌うには難易度が非常に高い曲ですが、喉の奥を震わせるような独特の歌唱法に挑戦したくなる一曲です。
米津玄師さんからもう一曲紹介させてください。ドラマ『ノーサイド・ゲーム』の主題歌として大ヒットした「馬と鹿」です。
このタイトル、漢字を見てピンときた方も多いはず。「馬」と「鹿」を並べると……そう、「馬鹿(バカ)」という言葉になります。
しかし、この曲で歌われている「馬鹿」は、単なる悪口ではありません。
損得勘定抜きで何かに打ち込む人、傷つくと分かっていても進まずにはいられない人。周囲からは「あいつは馬鹿だ」と笑われるかもしれないけれど、それでも自分の信じる道を突き進む、愚直なまでの情熱を持った人たちのことです。
ドラマがラグビーをテーマにしていたこともあり、楽曲全体からにじみ出るのは「肉体的な重み」です。
先ほどの「Flamingo」が飄々(ひょうひょう)とした変化球だとすれば、「馬と鹿」は真正面から受け止める剛速球。
サビの部分での、絞り出すような歌声を聴いてみてください。綺麗に整えられた声ではなく、少ししゃがれたり、裏返ったりしそうなギリギリのところで叫ぶようなボーカル。
これが、泥だらけになって戦う選手の姿や、人生の逆境に立ち向かう私たちの姿とリンクして、胸を熱くさせます。
「愛」とか「希望」といった綺麗な言葉だけでは救えない瞬間が、人生にはあります。
そんな時、この曲の持つ土の匂いがするような力強さは、背中を優しく押すのではなく、ガシッと肩を組んで「一緒に歩こうぜ」と言ってくれるような頼もしさがあります。
動物そのものの描写というよりは、漢字遊びを含めた概念的なタイトルですが、そのインパクトは絶大です。
次にご紹介するのは、文学的な歌詞と世界観で支持されているバンド、ヨルシカの「へび」という楽曲です。
ヨルシカといえば「ただ君に晴れ」のような爽やかなギターロックのイメージが強いかもしれませんが、この「へび」のような、少し影のあるしっとりとした楽曲にこそ、コンポーザーであるn-buna(ナブナ)さんの真骨頂が表れています。
この曲での「へび」は、何を意味しているのでしょうか。
歌詞を追っていくと、それは「愛」について歌っているようであったり、「喪失」、「渇望」を描いているようにも感じられます。
ボーカルのsuis(スイ)さんの歌い方が、この曲では非常に繊細です。
ささやくようなAメロから始まり、サビに向かって感情が溢れ出すものの、どこか冷めた目線を保っている。
この温度感の低さが、かえって心の奥底にある熱い感情を際立たせています。
派手な盛り上がりがあるわけではないけれど、一度聴くと耳に残って離れない。
音楽を聴くというよりは、短編小説を読んでいるような気分に浸れるので、静かな夜に一人で聴くのがおすすめです。
俳優の北村匠海さんがボーカルを務めるバンド、DISH//の大ヒット曲「猫」です。
(この楽曲はシンガーソングライターのあいみょんさんが提供したことでも有名ですね)
この曲のタイトル「猫」は、主人公の「僕」が、離れてしまった大切な人を想うとき、その人がもし「猫」になって現れたら……という空想から来ています。
「猫になったんだよな君は」という歌い出しは、あまりにも唐突で、でも妙に納得してしまうフレーズです。
気まぐれで、ふらっといなくなって、でもお腹が空いたら帰ってくる。
そんな猫の習性に、つかみどころのない恋人の性格を重ね合わせているんですね。
この曲の魅力は、なんといっても北村匠海さんの表現力豊かなボーカルです。
「ごめんね」とも「ありがとう」とも違う、「君がいなくなって寂しいけれど、君が猫になってでも現れてくれたら許しちゃうな」という、情けなくも愛おしい男心を、飾らない声で歌い上げています。
動物のタイトルがついた曲は、このように「人間関係の距離感」を動物の習性に例えるパターンが多く見られます。
「君は犬みたいだね」と言われるのと「猫みたいだね」と言われるのでは、全く意味が違ってくるように、動物というメタファーは、言葉で説明するよりも雄弁に相手のキャラクターを伝えてくれるのです。
いかがでしたでしょうか。
「ツバメ」「Flamingo」「馬と鹿」「へび、そして「猫」。
タイトルに動物の名前が入っているだけで、楽曲の世界観がぐっと広がり、色彩豊かになるのが面白いですよね。
アーティストたちは、動物という「他者」を借りることで、人間である自分たちの内面をより深く、より自由に表現しようとしているのかもしれません。
私たちが普段、言葉に詰まってしまうような複雑な感情も、動物たちの姿を借りれば、案外素直に言えたりするものです。
次に音楽を聴くときは、ぜひタイトルに注目してみてください。
もしかしたら、クジラや蝶々なんかが、あなたのプレイリストの中で待っているかもしれませんよ。
その動物たちがどんな顔をして、どんな声を上げているのか想像しながら聴いてみると、今まで聞き流していた曲が、まったく違った表情を見せてくれるはずです。
あなたの歌声にも「物語」を乗せてみませんか?
今回ご紹介したアーティストたちのように、歌には「技術」だけでなく、歌詞の世界観を表現する「心」や「想像力」が大切です。
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