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2025.12.03

コラム

日本の伝統を取り入れた音楽

目次

  1. 映画『国宝』の大ヒットが呼び覚ました「和」への熱狂
  2. なぜ今、若者たちは「伝統」に惹かれるのか?
  3. 現代ポップス×伝統芸能の先駆者たち
    1. 米津玄師が操る「こぶし」と「落語」の魔力
    2. 藤井風『まつり』に見る、祈りとグルーヴの融合
    3. millennium parade『Bon Dance』が描くサイバーパンクな盆踊り
  4. 「和」の楽曲を歌いこなすためのヒント
  5. 伝統は「保存」するものではなく「更新」するもの
  6. 自分の声で「和」を表現してみませんか?

最近、街中やSNSで「和」のテイストを感じる瞬間が増えたように思いませんか?

ファッションに和柄が取り入れられたり、昭和レトロな喫茶店が行列を作ったり。そんな中、エンターテインメントの世界でひときわ大きな話題をさらっているのが、映画『国宝』の大ヒットです。歌舞伎という、一見すると敷居が高そうな伝統芸能の世界を舞台に、命を削るようにして芸に生きる男たちの姿を描いたこの作品。その熱量はスクリーンを越えて、これまで伝統芸能に馴染みのなかった若い世代の心にも火をつけています。

「歌舞伎って、こんなにロックだったんだ」「伝統芸能って、堅苦しいものじゃなくて、実はすごく情熱的なものなんだ」。そんな感想がSNSのタイムラインを埋め尽くしているのを見ると、なんだか嬉しくなりますよね。

でも実は、この映画がヒットする少し前から、日本の音楽シーン、いわゆるJ-POPの世界では、静かに、しかし確実に「和の伝統」を取り入れた新しい波が起きていたんです。今回は、映画『国宝』の熱狂とリンクするように注目を集めている、日本の伝統を取り入れた名曲たちについて、少し深掘りしてみたいと思います。

 

なぜ今、若者たちは「伝統」に惹かれるのか?

不思議ですよね。デジタルネイティブと呼ばれる世代が、なぜ数百年前から続く「古いもの」に新しさを感じるのでしょうか。

おそらく、彼らにとっての「伝統」は、教科書に載っている勉強の対象ではなく、「まだ見たことのないクールなアート」として映っているのだと思います。海外のアーティストが日本の着物や民謡をサンプリングしてかっこよく表現しているのを逆輸入的に見たり、あるいはインターネットを通じてあらゆる時代の音楽にフラットにアクセスできるようになったことで、最新のEDMも、明治時代の民謡も、同じ「音」として並列に楽しんでいるのかもしれません。

かつては「古臭い」と敬遠されがちだった独特の音階やリズムが、今では「エキゾチック」で「エモい」要素として再評価されているのです。

それでは、実際にどんなアーティストたちが、どのようにして現代のサウンドに「和」を融合させているのか。代表的な3組のアーティストを例に、その魔法のような音楽作りを紐解いていきましょう。

 

現代ポップス×伝統芸能の先駆者たち

ここで紹介する楽曲は、単に和楽器を使っているだけではありません。歌い方、歌詞の世界観、そしてミュージックビデオに至るまで、徹底して「日本」を意識しながら、それでいて完全に「現代のポップス」として成立させている点が共通しています。

 

米津玄師が操る「こぶし」と「落語」の魔力

まず外せないのが、日本の音楽シーンを牽引し続ける米津玄師さんです。彼の楽曲には、どこか懐かしさを感じさせるメロディラインが多いのですが、特にその才能が爆発しているのが『Flamingo』と『死神』という2曲でしょう。

『Flamingo』を初めて聴いたとき、耳を疑った人も多いのではないでしょうか。ファンクのような跳ねるリズムの上に乗っているのは、明らかに「民謡」をルーツに持つ歌声です。声を細かく震わせる「こぶし(小節)」のようなテクニックが随所に散りばめられ、それが現代的なビートと奇跡的な融合を果たしています。特に2:13頃からのパートは必見。「民謡ファンク」とでも呼ぶべきこのジャンルは、彼だからこそ作り出せた世界観です。

そしてもう一曲、『死神』。タイトルからしてインパクトがありますが、これは古典落語の演目『死神』をモチーフにしています。歌詞の中には「アジャラカモクレン」という、落語の呪文のようなフレーズが登場し、楽曲全体がまるで一席の噺(はなし)を聞いているかのような構成になっています。ミュージックビデオでも、彼自身が噺家のように振る舞う姿が印象的でした。落語という「語りの芸」を、リズムと言葉遊びで音楽に昇華させるセンスには脱帽です。

 

藤井風『まつり』に見る、祈りとグルーヴの融合

続いて紹介するのは、藤井風さんの『まつり』です。この曲は、タイトル通り日本の「祭囃子(まつりばやし)」を思わせる笛の音色から始まります。しかし、その直後に入ってくるのは、重厚で都会的なビート。このギャップがたまりません。

藤井風さんの音楽の根底には、常にスピリチュアルな精神性や、すべてを受け入れるような優しさがありますが、この曲における「和」は、単なる装飾ではありません。日本人が古来より大切にしてきた「ハレとケ」の感覚、つまり日常と非日常を行き来する心の動きが、音楽そのもので表現されているのです。

MVも非常に象徴的です。群馬県のとある場所で撮影された映像は、日本の田舎の風景を美しく切り取りつつ、どこか異世界のような浮遊感があります。彼が盆踊りのように手を動かしながら歌う姿は、最新のR&Bを聴いているはずなのに、なぜかおばあちゃんの家で過ごした夏休みを思い出させるような、不思議な郷愁を誘います。

歌詞も秀逸で、「何でもない日常こそがお祭りなんだ」というメッセージを、和風の言い回しと英語を巧みにミックスして伝えてくれます。日本語の響きがいかに音楽的であるかを、改めて教えてくれる一曲です。

 

millennium parade『Bon Dance』が描くサイバーパンクな盆踊り

最後に紹介するのは、King Gnuの常田大希さんが率いるクリエイティブ集団、millennium parade(ミレニアムパレード)の『Bon Dance』です。「Bon Dance」、つまり「盆踊り」です。

しかし、彼らが描く盆踊りは、神社の境内で行われるのどかなものではありません。まるで近未来の東京、ネオンが輝くサイバーパンクな世界で、妖怪と人間が入り乱れて踊り狂うような、カオスで妖艶な夜の宴です。

サウンドも強烈です。ヒップホップやジャズ、エレクトロニックミュージックが複雑に絡み合う中に、童歌(わらべうた)のような不気味さと懐かしさを併せ持つメロディが差し込まれます。「怖いけれど、覗いてみたい」。そんな、夏祭りの夜に子供が感じるドキドキ感を、最先端の音響技術で再現したような楽曲です。

若い世代にとって、盆踊りは「地域のお付き合い」だったかもしれませんが、この曲を聴くと「夜通し踊り明かすクラブイベント」の起源が盆踊りだったのではないか、という錯覚さえ覚えます。伝統を「破壊」して「再構築」する、最もアグレッシブな和の取り入れ方と言えるでしょう。

 

「和」の楽曲を歌いこなすためのヒント

演歌を歌う人

さて、こうした楽曲を聴いていると、「自分でも歌ってみたい!」と思うのが音楽好きの性(さが)というものではないでしょうか。しかし、実際にカラオケで歌ってみると、「なんだか雰囲気が出ない」「平坦に聞こえてしまう」という壁にぶつかることがあります。

実は、これらの楽曲をかっこよく歌うには、西洋音楽(一般的なポップス)とは少し違う、日本独特の歌唱テクニックが必要になることが多いのです。

一つ目のポイントは、やはり「こぶし」や「しゃくり」といった装飾音です。音をまっすぐ出すのではなく、あえて音程を揺らしたり、下からすくい上げるように歌ったりすることで、あの独特の「粘り気」や「色気」が生まれます。米津玄師さんの曲などは、まさにこのニュアンスが命です。

二つ目は「言葉の置き方」です。日本語は母音(あいうえお)がはっきりしている言語ですが、藤井風さんのようにグルーヴ感を出すには、あえて母音をあいまいにしたり、英語のように子音を強調したりするリズム感が求められます。この「和のメロディ」と「洋のリズム」のバランス感覚こそが、歌いこなすための鍵となります。

 

伝統は「保存」するものではなく「更新」するもの

映画『国宝』が描いた歌舞伎の世界も、実はその時代ごとの流行を取り入れながら進化してきた歴史があります。出雲阿国(いずものおくに)が川原で踊ったとき、それは当時の最先端の「傾く(かぶく)」パフォーマンスでした。

今回ご紹介したアーティストたちも、決して「昔はよかった」と懐古主義に浸っているわけではありません。彼らは、自分たちの足元にある素晴らしい文化の土壌から栄養を吸収し、それを現代のテクノロジーや感性というフィルターを通して、全く新しい花を咲かせているのです。

米津玄師さんが民謡のリズムで踊らせ、藤井風さんが祭りのビートで祈りを捧げ、millennium paradeが盆踊りで夜を彩る。これらはすべて、現在進行形の「新しい日本の伝統音楽」なのかもしれません。

映画『国宝』を観て伝統芸能の熱量に圧倒されたなら、その足でぜひ、彼らの音楽を改めて聴き直してみてください。きっと、これまでとは違った景色が見えてくるはずです。

 

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