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2025.11.20

コラム

ミュージカルの歌い方

こんにちは! 音楽は好きだけど、ミュージカルってちょっと敷居が高い…なんて思っていませんか? たしかに、CDで聴くJ-POPやロック、あるいはクラシックとも違う、あの独特の「歌い方」。今日は、その秘密に迫りつつ、音楽に詳しくなくてもミュージカルが10倍楽しくなる「聴き方」のコツを、ゆるっとお話ししていこうと思います。

ミュージカルの歌は「セリフ」である! ~J-POPとの根本的な違い~

さて、いきなり結論から参りましょう。ミュージカルの歌と、私たちが普段聴いているJ-POPやロック、いわゆる「レコーディング音源」や「音楽ライブ」の歌。これ、根本的に「目的」が違います。

J-POPやロックのアーティストが歌うとき、その目的は多くの場合、「音楽(曲)そのものを、最高のクオリティで聴かせること」です。メロディの美しさ、リズムの心地よさ、そしてもちろん、シンガーの素晴らしい「歌声」を味わう。それがメインディッシュですよね。レコーディングなら、最高のマイクで、最高のテイク(録音)を選び、時にはエフェクトをかけて、完璧な「作品」を作り上げます。

一方、ミュージカルの歌は違います。彼らの歌は、「歌の形をしたセリフ」であり、「歌の形をした演技」なんです。

ミュージカルにおいて、登場人物たちがなぜ突然歌い出すのか。それは、「普通のセリフでは表現しきれないほど、感情が高ぶってしまったから」。悲しすぎても、嬉しすぎても、怒りすぎても、人は言葉を失うか…あるいは、歌い出すのです(ミュージカルの世界では)。

Point!
J-POP/ロックの歌 = 「曲」を聴かせる
ミュージカルの歌 = 「物語」を進め、「感情」を伝える

だから、ミュージカル俳優は「上手に歌う」だけではダメなんです。「役として」歌わなければなりません。もし、演じている役が絶望の淵にいるなら、ただ美しい声で「私は悲しい」と歌うのではなく、本当に絶望している人の「声」で歌わなければなりません。それが、時には叫び(シャウト)になったり、か細い声になったり、涙で詰まったりするわけです。

カラオケでミュージカルの曲を、役になりきって「大げさに」歌うと、ちょっと周りがザワつくかもしれませんが、それはミュージカル的には「大正解」の歌い方なんですね。あれは「大げさ」なのではなく、「感情が溢れた」結果の表現なのです。

 

なぜ「あの歌い方」? ミュージカル歌唱法の秘密(と、ちょっとした歴史)

「でも、それにしても、なんか独特の『発声』じゃない?」

そうなんです。その通り。これにもちゃんと理由があります。

ディクション(滑舌)の鬼、であれ

まず、ミュージカルは「物語」を伝えるものです。歌が「セリフ」である以上、「何を言っているか」が客席に100%伝わらなければ、話になりません。

レコーディング音源なら、少しくらい歌詞が聴き取りにくくても、それは「味」になることがあります。ささやくような歌い方、息遣いを多用する歌い方…。マイクがすぐそこにあって、全部拾ってくれますから。

しかし、劇場はどうでしょう。もちろん現代では俳優さんたちは小さなマイク(ピンマイク)をつけていますが、それでも広い劇場の隅々まで、オーケストラの生演奏に負けずに「言葉」を届けないといけません。

だから、ミュージカル俳優は「ディクション(Diction)」、つまり「言葉の発音」や「滑舌」を、これでもかというほど訓練します。母音(あ・い・う・え・お)や子音(k, s, t, n…)を、非常にクリアに、ハッキリと発音します。これが、私たちが「ミュージカルっぽい歌い方だな」と感じる正体の一つ。ちょっとクッキリしすぎているように聴こえるかもしれませんが、あれは言葉を届けるための「技術」なんですね。

オペラから受け継いだ「響き」と「圧」

もう一つの理由は、ミュージカルのルーツにあります。ミュージカルは、もともとオペラやオペレッタ(軽いオペラ)から発展してきた部分があります。

マイクなんて存在しなかった時代、オペラ歌手たちは、巨大なオペラハウスで、大編成のオーケストラに対抗して、生身の「声」だけで勝負しなければなりませんでした。どうしたか?

彼らは、体全体を「楽器」のように使い、声を「響かせる」技術(いわゆるクラシックな発声法)を極限まで高めたのです。

ミュージカルもその流れを汲んでいます。もちろん、現代のミュージカルはマイクを使いますし、ポップスやロック、ジャズなど様々な発声法を取り入れています。特に「ベルティング(Belting)」と呼ばれる、地声に近い力強い高音は、ミュージカルならではの迫力ある表現として多用されます。

「あの人、マイクいらないんじゃない?」と思うほどの声量と「声の圧」。あれは、マイクがなかった時代からの伝統と、演劇的な表現が組み合わさって生まれた、独特の歌唱法なんですね。

 

もう怖くない! ミュージカルを「音楽的に」楽しむための鑑賞術

「理屈はわかったけど、どう楽しめばいいの?」

お任せください。音楽の知識ゼロでも大丈夫。ミュージカルの「歌」を楽しむための、簡単な鑑賞術をご紹介します。

その1:「なぜ、今歌い始めた?」と考える

これは一番簡単で、一番奥が深い楽しみ方です。登場人物が歌い始めたら、「お、きたきた。で、今どんな気持ちなの?」と心の中でツッコんでみてください。

ものすごく嬉しくて歌ってるのか、悲しくて歌ってるのか。それとも、誰かを説得するために歌ってるのか。歌の「メロディ」や「歌い方」に、その感情が必ず表れています。

激しいロック調なら怒りや情熱、しっとりしたバラードなら悲しみや愛。音楽はウソをつきません。歌詞が完璧に聞き取れなくても、音楽の「雰囲気」がその人の「気持ち」を教えてくれます。

その2:「リプライズ(Reprise)」を探せ!

「リプライズ」とは、「繰り返し」という意味です。ミュージカルでは、「同じメロディが、違う場面で、違う歌詞や違う雰囲気で」何度も登場することがよくあります。

「あれ、このメロディ、さっきも聴いたぞ?」と思ったら、チャンスです。

例えば、最初は希望に満ちて歌っていたメロディが、物語の後半、主人公が絶望した時に、短調(暗い響き)で、ゆっくりと、か細く歌われる…とか。

同じメロディを使うことで、「あの時はあんなに希望に満ちていたのに…」という対比が際立ち、観客の心にグッと響くのです。これはミュージカルならではの、非常に巧みなテクニック。見つけられると、ちょっと「通」になった気分になれますよ。

その3:デュエットの「ハモり」は、心の距離

二人が一緒に歌う「デュエット」。ただ「ハモってて綺麗だな~」だけでも良いのですが、一歩踏み込んでみましょう。

二人が「全く同じメロディ」を歌っていたら? → 二人の心は一つ、完全に同意しています。

二人が「違うメロディ」だけど「綺麗にハモって」いたら? → 考えは少し違うかもしれないけど、お互いを尊重し、調和しています(恋人同士のラブラブなデュエットとか)。

二人が「違うメロディ」を「同時に」歌い、しかも「ハモってない」(不協和音)だったら? → ケンカ中です(笑)。お互いの主張がぶつかり合っている、非常に緊迫したシーンです。

このように、音楽の「重なり方」が、そのまま登場人物たちの「心の距離」や「関係性」を表しているんです。

 

【初心者向け】まずはコレを聴いてみて!「歌」がスゴいミュージカル作品3選

「うんちくはいいから、オススメを教えて!」という声が聞こえてきそうなので、独断と偏見で、「歌」の表現力に圧倒されるミュージカルを3つ、ご紹介します。

1. 『レ・ミゼラブル』

ミュージカルの金字塔。まず、この作品、ほぼ全編「歌」です。普通のセリフがほとんどない(こういう形式を「ソング・スルー」と言ったりします)。

つまり、日常会話から愛の告白、戦闘シーンまで、全部歌。まさに「歌=セリフ」を体現しています。「民衆の歌(Do You Hear the People Sing?)」のような大迫力の合唱(アンサンブル)から、絶望を歌う「夢やぶれて(I Dreamed a Dream)」まで、人間のあらゆる感情が歌に込められています。先ほど紹介した「リプライズ」も多用されていて、物語の深みにどっぷり浸かれます。

2. 『ウィキッド』

『オズの魔法使い』の「裏話」。二人の魔女の友情と対立を描いた、比較的モダンな作品です。

音楽はJ-POPやディズニーソングにも通じるキャッチーさがありますが、歌唱に求められる技術は超絶。特に、二人の主人公がそれぞれの想いをぶつけ合うデュエットや、本作のハイライトである「自由を求めて(Defying Gravity)」は圧巻の一言。

「ベルティング(力強い高音)」の凄まじさを浴びるように体感できます。「人間って、こんな声出るんだ…」と驚くこと請け合いです。

3. 『オペラ座の怪人』

言わずと知れた名作。タイトルに「オペラ」と入っているだけあり、クラシック(オペラ)の要素がふんだんに盛り込まれています。

この作品の面白いところは、「歌」そのものが物語の重要なテーマであること。天才的な音楽の才能を持つ怪人(ファントム)が、美しい声を持つクリスティーヌに「歌」を教え、彼女をプリマドンナにしようとします。

ファントムの妖艶で力強い歌声と、クリスティーヌの透明感あふれるソプラノ(非常に高い女声)の対比。そして、あの有名な「ドゥーン、ドゥンドゥンドゥンドゥーン♪」というパイプオルガンの不気味なメロディ。音楽が、そのまま物語のサスペンスとロマンスを牽引していきます。

 

まとめ:歌が物語を連れてくる

さて、長々とお話ししてきましたが、ミュージカルの歌の「ナゼ?」は少し解消されたでしょうか。

ミュージカルの歌は、「歌が上手い」を披露する場ではなく、あくまで「物語を語る」ための手段。

あの大げさに見える歌い方も、クリアすぎる発音も、オーケストラに負けない声量も、すべては広い劇場の観客に、役の「感情」と「言葉」を届けるために、長い歴史の中で磨き上げられてきた「表現方法」であり「技術」なのです。

「歌がうまいなぁ」と感心するだけでなく、「この歌で、何を伝えようとしているんだろう?」という視点をちょっと持つだけで、ミュージカル鑑賞は格段に面白くなります。

食わず嫌いはもったいない! まずは映画版でも、サウンドトラック(CD)からでも構いません。ぜひ、彼らの「歌の形をしたセリフ」に、耳を傾けてみてください。きっと、あなたを非日常の物語へと連れて行ってくれるはずですよ。


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