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「録音向きの声」「ライブ向きの声」って?声の響き方を解説
あなたの声はどんな声?

はじめに:同じ声なのに“響き方”が違う?
「録音ではすごくいい声って言われるのに、ライブだと存在感が薄い気がする」
「逆に、ライブではウケるのに、録った自分の歌声を聴くと“あれ?ちょっと荒い?”って思う」
──こんなギャップ、実は「あるある」です。
声というのは、どこで・どうやって聞かれるかによって、別人レベルに印象が変わります。これは心理的な“気のせい”ではなく、音の伝わり方・共鳴(響きの場所)・マイクの特性が変わるからです。
この記事では、「録音向きの声」と「ライブ向きの声」という2つのタイプをわかりやすく説明しながら、あなたの声はどこで一番魅力的に聴こえるのか?というヒントを探っていきます。
録音向きの声とは?

まず「録音向きの声」。これは、マイクで拾ったときにクリアで心地よく聴こえる声のことです。
録音では、声はマイクのすぐ近くで拾われ、その後はスピーカーやイヤホンなど“耳のすぐそば”で聴かれます。つまり、ものすごい近距離で耳元に話しかけられているような距離感になります。
録音向きの声には、こんな特徴がよくみられます。
- やわらかいニュアンスが伝わりやすい: ささやき声や息まじりの発声など、繊細な表情がそのまま録音に乗る。マイクはとても敏感なので、小さな息づかいも“味”として拾ってくれます。
- 耳に近いところで心地よい音域が強い: 人の声の聞き取りやすさに関わる中音域(だいたい200Hz〜5kHz付近と言われる帯域)が素直に伝わると、歌詞がはっきり届き、聴き疲れしにくくなります。これはボーカル編集・ミキシングでも重要視される帯域です。
- 濁りすぎない倍音バランス: 倍音(声の中に含まれる“音の層”)が多すぎるとゴワっと聞こえ、少なすぎると平坦に聞こえます。良い録音ボーカルは、その倍音の量と質がちょうどよいと評価されます。これはエンジニアが「抜けがいい」「クリア」と表現する部分です。
わかりやすくたとえると、録音向きの声は「至近距離でささやいても不快じゃない声」です。
呼吸音やちょっとした声の震えすら“表現”として成立するタイプ。
このタイプの声をもつ歌手は、バラードやしっとりした曲で「マイクの中で感情が揺れている」ように聴かせるのがとてもうまいことが多いです。近距離で録るほど低音が少しふくらんであたたかく聴こえる“近接効果(プロキシミティ・エフェクト)”をコントロールすることで、優しい声でも厚みを持たせることができます。
ライブ向きの声とは?

次に「ライブ向きの声」。これは、空間の中でよく届く声・遠くの客席にもハッキリ伝わる声のことです。
録音と違って、ライブ会場ではあなたの声は空気を通って客席まで“生で”届きます。
もちろんマイクやスピーカー(PA)は使いますが、響きの土台はあくまで生身の声です。
ライブ向きの声には、こんな特徴がよくあります。
- 声の芯が太い: 声にしっかりした輪郭があるので、バンドの大きな音の中でも埋もれにくい。「音量が大きい」ではなく「離れても形が崩れない」ということが大事です。
- 中低音(胸のあたりが鳴っている感じ)が豊か: 胸や体全体が共鳴しているように感じる発声は、空間の中をよく飛びます。これは舞台俳優やアリーナ規模のシンガーが「声を飛ばす」「プロジェクションする」と呼ぶテクニックに近いものです。
- 響きが前に進む(プロジェクション): 呼吸を深く使い、息を支えた状態で発声することで、声が遠くの席にまで届きます。発声において“しっかり立つ・姿勢を安定させる”ことはプロジェクションに直結すると、舞台やボーカルトレーニングでも教えられています。
こちらのタイプは、いわば「会場全体を包み込む声」。
あなたがステージに立ったとき、50人でも5000人でも「この人の声、ちゃんと届く」と思わせる力があります。
ライブ会場の反響や残響(リバーブ)があっても輪郭が消えにくい声は、まさにライブ向きの資質といえます。
録音向きとライブ向きの違いを音響的に見る
では「録音向き」と「ライブ向き」は、何が決定的に違うのでしょうか?
ポイントは大きく3つあります。
① どこで共鳴しているか
録音向きの声は、口や鼻のあたりなど比較的コンパクトな空間での共鳴(いわゆる“前に集めた声”“顔の前で鳴る声”と表現されることが多い)がはっきりしていて、近距離マイクに合います。細かいニュアンスが拾われやすいからです。
ライブ向きの声は、胸・喉・頭など体全体を共鳴させ、声に厚みとエネルギーを持たせます。こうした共鳴は「プロジェクション(遠くまで届かせる力)」と強く結びついていると説明されています。
② どれくらいの距離で聴かれるか
録音ではマイクは数センチ〜十数センチの距離まで近づきます。近いほど低音(低い周波数帯域)が少し強調され、声にあたたかさや厚みを加える「近接効果(プロキシミティ・エフェクト)」が起きます。
つまり、小さな声でも“しっとり太い声”に聞こえることがあるのです。
ライブでは逆に、お客さんは数メートル〜数十メートル離れています。人の聴覚は距離が離れるほど息音などの細かい成分よりも、輪郭のはっきりした中音域を主にとらえます。だからこそ「芯がある声」「前に飛ぶ声」が必要になります。
③ “聞かせたいもの”が違う
録音は、とても近い距離のドラマです。小さなため息も、唇が触れる音も、“感情”として成立します。
ライブは、空間全体を巻き込む儀式です。声に説得力と存在感がなければ、照明もバンドもPAもぜんぶ豪華でも、結局届かない。
何を聞かせたいのかによって、声の出し方は変えていく必要があるのです。
自分の声を活かすための練習法

ここからは実践編。「私は録音向きだからライブは無理」「ライブ型だから繊細なのは苦手」と思う必要はありません。声はトレーニングである程度コントロールできます。
- 録音向きの声を育てたい場合:
・息をゆっくり、一定量で出す練習(ブレスコントロール)をする
・マイクとの距離を安定させる(距離で音色が変わる=近接効果を必要以上に暴走させない)
・小さな声でもピッチとリズムを崩さない
→「耳元のささやきでも音楽になる」状態を目指します - ライブ向きの声を育てたい場合:
・腹式呼吸や体幹で支える呼吸を意識し、声を遠くの壁やホール後方に届けるイメージで発声する
・胸や頭の中での響きを感じながら、無理なく声量を上げる
・姿勢を安定させて、喉だけに力をかけずに声を前に飛ばす練習をする
これらは演劇やボーカル指導でも「プロジェクション」として基本中の基本とされています。 - 両方ほしい場合:
・実際に録音して自分の声を客観的に聴く
・スタジオリハや小さなライブバーなど、空間の中で自分の声がどう聞こえるかを確認する
・そのうえで、曲ごとに「今日は“近距離の親密系”で行く」「これは“会場を揺らす系”で行く」と、キャラを切り替える
→プロのアーティストも、スタジオとステージで声の使い方を変えるのは当たり前です。
まとめ:マイクの向こうとステージの上で輝くために
「録音向きの声」と「ライブ向きの声」は、どちらが“正解”という話ではありません。
録音向きの声は、マイクのそばで繊細な感情を届ける力。
ライブ向きの声は、空間全体を包み込んで遠くのお客さんと気持ちを共有できる力。
自分の声の長所を知っておくと、「どこで歌えば一番刺さるのか」「どう届けたいのか」がはっきりします。
あなたの声は、あなたの武器です。マイクの前でもステージの上でも、ちゃんと主役になれるように、少しずつ“響き方”をデザインしていきましょう。