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昭和から令和、カラオケで盛り上がる曲はどう変わった?
時代が変われば、歌も変わる

目次
カラオケは日本の国民的娯楽

1970年代に誕生したカラオケは、いまや日本の国民的娯楽です。家庭用でもスマホでも楽しめるようになりましたが、やはり「カラオケボックス」でみんなで歌う時間は特別なもの。
そして面白いのは、時代ごとに“盛り上がる曲”の傾向が全く違うということです。
昭和・平成・令和――この約50年で、日本の音楽シーンは大きく変化してきました。それに合わせて、カラオケで盛り上がる曲も、歌い方も、まるで別物に。今回は、その変遷をちょっとノスタルジックに、そして少し笑いを交えながら、振り返ってみましょう。
昭和:みんなで肩を組んで大合唱の時代
カラオケが誕生したのは1970年代。まだボックス型ではなく、スナックや居酒屋の片隅にカラオケ機器が置かれていた時代です。盛り上がる曲といえば、誰もが知っている演歌・歌謡曲・フォークソングでした。
代表的な曲には、美空ひばりの「川の流れのように」(1989)、石原裕次郎の「銀座の恋の物語」(1961)、サザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」(1978)などがあります。
メロディーが覚えやすく、サビを全員で大声で歌える曲が人気でした。マイクを回して一人ずつ歌うというよりも、全員で合唱するのが当たり前。肩を組み、手拍子をしながら“場”そのものを楽しむスタイルです。
歌唱力よりも「ノリ」が重視され、声が多少ズレていても誰も気にしません。むしろ“上手すぎる人”は浮いてしまうこともあったとか。昭和のカラオケは、まさに「みんなで作る宴会芸」だったのです。
平成:バラードとJ-POP黄金期の到来
平成に入ると、カラオケ文化は爆発的に広がります。1980年代後半〜1990年代初頭にかけて、通信カラオケ(DAM・JOYSOUND)が登場。楽曲数が飛躍的に増え、自分の好きなアーティストの曲をすぐに歌えるようになりました。
この時代に盛り上がる曲の主役になったのは、J-POPのヒット曲とバラードです。
中島みゆき「糸」(1992)、SMAP「世界に一つだけの花」(2003)、宇多田ヒカル「First Love」(1999)、GLAY「HOWEVER」(1997)、L’Arc〜en〜Ciel「HONEY」(1998)など、今でもカラオケ定番として歌い継がれる名曲が次々と誕生しました。
この頃の特徴は、「みんなで歌う」から「一人がしっかり歌う」へとスタイルが移行したことです。音域も広く、メロディーも複雑な曲が増え、“歌唱力”が注目されるようになりました。
同時に、テレビ番組『THE夜もヒッパレ』(日本テレビ)や『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』などで、アーティストの歌をみんなでまねる文化が広がりました。会社の飲み会でも「バラードでしっとり聴かせる」人が一目置かれる、ちょっとしたスタータイムが生まれるようになります。
令和:SNSと高音ブームが生んだ新しい盛り上がり方
そして令和。カラオケの盛り上がり方はさらに多様化しています。TikTokやYouTube、THE FIRST TAKEなどの影響で、「曲の一部だけ」「サビだけ」を歌う・盛り上がる文化が一般化しました。
代表的な盛り上がり曲は、Ado「うっせぇわ」(2020)、YOASOBI「夜に駆ける」(2019)、Official髭男dism「Pretender」(2019)、King Gnu「白日」(2019)など。
これらの曲は共通して音域が非常に広く、高音が印象的です。平成のJ-POPが「バラードで聴かせる」方向だったのに対し、令和は「高音で魅せる」方向にシフトしています。
また、SNSの普及により「カラオケで歌った動画を投稿する」人も増え、歌うこと自体が“発信”になっている点も特徴です。友人同士でカラオケルームをライブ配信スタジオのように使い、サビだけを順番に歌い合うスタイルも珍しくありません。
盛り上がる曲の「構造」がどう変わったか
時代とともに盛り上がる曲の構造にも変化が見られます。
- 昭和:覚えやすいサビ・単純なメロディー → 全員で大合唱
- 平成:壮大なメロディー・感情的な歌詞 → 一人がじっくり歌い上げる
- 令和:高音サビ・テンポの速い展開 → サビ中心で盛り上がる&SNS向け
特に令和のヒット曲は、イントロが短く、サビが早めに出てくる傾向が顕著です。これは、SNSの短尺動画文化(TikTokなど)との親和性が高いからです。人々の集中時間が短くなったともいわれますが、逆に言えばサビにすべてを賭けた“瞬発力勝負”の曲が増えたということでもあります。
つまり、盛り上がる曲も「みんなで歌う」→「一人で聴かせる」→「みんなで映える」に変化してきたのです。
まとめ:時代とともに、歌い方も楽しみ方も進化する
昭和は肩を組んで大合唱、平成は一人でバラードを熱唱、令和は高音でサビを切り取ってSNSにアップ――カラオケの盛り上がり方は、音楽シーンの変化とともに見事に変化してきました。
もちろん、どの時代の曲にもそれぞれの良さがあります。サザンの大合唱も、宇多田のしっとりバラードも、Adoのハイトーンも、それぞれがその時代の空気を映し出しています。
次にカラオケに行くときは、ぜひ「時代をまたいだセットリスト」を組んでみてください。昭和で全員で盛り上がり、平成で聴かせ、令和で映える。きっとその日のカラオケは、ちょっとした音楽ドキュメンタリーになるはずです。