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年を取ると声が変わるのはなぜ?加齢と声帯の関係
あなたも、声も、変わっていく

目次
「昔と声が違う…」誰もが感じるあの瞬間
昔の動画などを見ていて、「あれ、声の響きが違う?」と感じたことはありませんか?
あるいは、電話口で「お父さん、最近声がかすれてきたね」と言われたとか。声の変化は、ある日突然やってくるわけではなく、年齢とともに少しずつ進行する自然な現象です。
もちろん、風邪や喉の疲れなど一時的な原因で声が変わることもあります。しかし、長期的に「声質が変わった」と感じる背景には、しっかりとした医学的な理由があります。その主役が、声を作る中枢――声帯です。
声の正体を知ろう:声帯と共鳴のしくみ

声は、肺から送り出された空気が声帯(声のヒダ)を振動させ、その音が喉や口、鼻の空間で響くことで作られます。声帯はゴムのように柔らかい2枚のひだで、空気が通ると「ブー」という音叉のような振動が起こります。
この声帯の振動はとても繊細で、ほんの少しの厚みや弾力の変化でも音の高さや響きが変わります。さらに、口腔や鼻腔といった「共鳴腔」が、声に個性と深みを与える“響板”のような役割を果たしています。
つまり、声は「声帯」×「空気」のコラボレーション。その中でも、声帯は「音源」にあたる極めて重要なパーツです。この声帯が加齢によって少しずつ変化していくことが、声質の変化の一因となります。
加齢で声帯に起きる変化とは?
声帯は筋肉と粘膜でできています。年を重ねると、この構造にさまざまな変化が起こります。
- 声帯がやせる(萎縮)
加齢とともに声帯を構成する筋肉が萎縮し、厚みが減っていきます。これにより、声帯がしっかり閉じにくくなり、空気が漏れやすくなります。その結果、声がかすれたり、息っぽく聞こえるようになります。 - 弾力が減る
声帯の表面には「粘膜固有層」と呼ばれる柔らかい層がありますが、加齢によりコラーゲンやエラスチンが減少し、ハリや弾力が低下します。振動の滑らかさが損なわれ、高音が出にくくなったり、声の伸びがなくなることがあります。 - 潤いが減る
声帯の表面は薄い粘液で覆われており、これが潤滑油の役割を果たしています。加齢で分泌量が減ると、声帯同士がスムーズに振動できず、ザラついた音や疲れやすい声になります。
これらの変化は医学的にも「声帯萎縮(presbyphonia/加齢性嗄声)」と呼ばれ、耳鼻咽喉科の診察でもよく扱われるテーマです。
男女で違う!加齢による声の変化
声の変化は男女で少し異なります。
男性は、加齢とともに声帯がやせ、声帯がしっかり閉じなくなるため、声が高くなる傾向があります。若い頃は低く響いていた声が、年齢を重ねると少し軽い印象になることがあります。
一方、女性は閉経後にエストロゲンの分泌が減る影響で声帯が厚くなり、声が低くなる傾向が報告されています。つまり、男女で逆方向の変化が起きるのです。
このため、高齢になると男女の声の高さの差が縮まるといわれています。実際に、声の周波数(基本周波数)は平均すると男性は上昇、女性は下降するというデータがあります。
声帯以外にもある「声の老化」の原因
声の変化は声帯だけの問題ではありません。他にも影響する要素があります。
- 呼吸機能の低下
加齢によって肺活量や横隔膜の筋力が落ち、声に必要な空気の圧力が弱まります。これが声の勢いや張りを低下させます。 - 姿勢の変化
背中が丸くなるなど姿勢の変化も、呼吸や共鳴に影響します。声がこもる、響きが減るといった変化につながります。 - 口腔・鼻腔の変化
歯の喪失や鼻の通りの悪化など、共鳴腔にあたる部分の形や状態の変化も、声の響きに影響します。
つまり、声の老化は全身の変化が複雑に絡み合う現象といえます。
声は鍛えられる!加齢と上手につきあうコツ
ここまで読むと、「もう歳だから仕方ない…」と思うかもしれませんが、実は声は年齢に関係なく鍛えることで改善・維持が可能です。
ポイントは、「声帯の筋肉を適度に使い続ける」こと。
ウォーキングと同じで、声帯も使わなければ衰えます。軽い発声練習や歌を日常に取り入れることで、声帯の筋肉や柔軟性を保つことができます。
また、水分をこまめに摂って声帯を潤すこと、無理な発声を避けることも大切です。専門的なトレーニングを取り入れれば、年齢を重ねても驚くほど若々しい声を保つことは可能です。
まとめ:声は年齢とともに“育つ”もの
声の変化は、避けられない「老化」ではありますが、それは同時に声の“成長”でもあります。若い頃には出せなかった深みや味わいが、年齢を重ねることで自然と備わることも多いのです。
大切なのは、声帯の仕組みを理解し、自分の声と上手につきあうこと。正しくケアをすれば、声は一生の財産になります。
昔と今の声を比べて落ち込む必要はありません。むしろ、「今だから出せる声」を磨いていきましょう。