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2025.10.18

コラム

マイクの持ち方で声が変わる!? プロがやってる正しいマイクの使い方

マイクの正しい持ち方・使い方



なぜ持ち方で音が変わるのか

マイクは「どこから音を拾うか」を決める指向性という性質を持っています。ライブでよく使われるのは、SM58に代表されるカーディオイド(単一指向性)マイクです。これは、マイクの正面からの音を最もよく拾い背面は拾いにくいという特性があります。

この背面には「スリット」と呼ばれる小さな空気孔があり、指向性のカギとなっています。ここを手で覆ってしまうと、本来の特性が崩れ、音が全方向から入りやすくなり、音質がこもったりハウリングが起きやすくなったりします。

さらに、マイクを口に近づけると低音が強調される近接効果が働きます。数センチの距離で声の印象が劇的に変わるため、持ち方や構え方次第で「細く軽い声」にも「太く芯のある声」にもなるのです。


歌への影響:音の拾い方と声の出しやすさ

① グリルを覆う「カッピング」は厳禁
マイクのグリル部分を手で包むと、スリットが塞がれて指向性が崩れ、ハウリングの原因になります。PAが音量を上げられなくなり、結果的に「声が通らない」「抜けが悪い」と感じることになります。特にライブではこの差が顕著です。

② 角度をつけると息がきれいに入る
マイクを真正面に構えると、破裂音(P・B)やサ行の摩擦音が直接マイクに当たり、耳障りな音になりやすいです。10〜30度ほど斜めに構えることで、これらのノイズを抑えつつ自然な音を収録できます。これは、ポップフィルター代わりになる便利なテクニックです。

③ 距離で声の印象をコントロール
マイクを近づけると近接効果で低音が増し、太い声になります。逆に離すとスッキリとした音になります。サビでは近づいて迫力を出し、語りや静かな部分では少し離して抜けのよい声にするなど、距離を演出に活かすと歌が格段に立体的になります。

④ 握る位置で余計なノイズを防ぐ
マイクの柄の下側を軽く握り、グリルやスイッチ付近を持たないのが基本です。上を持つと無意識にカッピング気味になり、ハンドリングノイズ(手の擦れる音)も増えます。力を入れすぎると喉にも余計な緊張が入るので、軽く握る意識を持ちましょう。


プロが実践しているマイクフォーム

プロのボーカリストが共通して行っているマイクの持ち方には、いくつかの基本があります。

  • 距離:1〜5cmを基準に、曲の展開に応じて微調整
  • 角度:10〜30度のオフ軸で、破裂音や息の直撃を防ぐ
  • グリルを覆わない(背面スリットをふさがない)
  • マイクの特性に応じてモニターを配置

これだけで、音の明瞭度が劇的に変わります。プロは声を鍛えるだけでなく、マイクという「音の出入り口」を正確に使いこなしているのです。

特に近接効果の使い方は重要です。サビ直前で少しマイクを寄せると声が太くなり、インパクトを作れます。逆に歌い出しで少し離すと、低域が膨らみすぎるのを防げます。これは、プロのレコーディングやライブでよく見られるテクニックです。


ステージでの配置とハウリング対策

マイクの特性によって、モニタースピーカーの配置も変わります。カーディオイド型は真後ろが最も音を拾いにくい位置なので、モニターはマイクの背面に置くのが基本です。

一方、スーパーカーディオイド型は背面の真後ろではなく、左右127°・233°の方向が“ハウリングしにくい角度”になっています。そのため、モニターを少し左右に振って配置します。マイクの種類を知らずに配置すると、いくら持ち方を整えてもハウリングが起きやすくなるので注意が必要です。

また、マイクと口の距離を近く保つ「クローズマイキング」は、目的の声と他の音の比率を高め、音量を上げてもハウリングしにくくする基本テクニックです。


自宅でできる練習法

マイクの扱いは、日々のちょっとした練習で格段に上達します。

  • 距離を変えて録音:2cm/5cm/10cmの距離で録音し、声の太さや明瞭度の違いを確認
  • 角度で破裂音チェック:「ぱぴぷぺぽ」「さしすせそ」を角度別に録音し、ノイズが減る位置を体感
  • 鏡を使って手元チェック:グリルに指がかかっていないかを確認し、フォームを定着させる

この3つを繰り返すだけで、ライブでも自然に“いい持ち方”ができるようになります。


よくある勘違いQ&A

Q1:マイクは口に当てるほどいい?
A:密着させると低音が出やすくなりますが、破裂音やこもりが増え、逆効果になることも。数センチの余裕がベストです。

Q2:カッピングすると抜けが良くなる?
A:むしろ逆です。こもってハウリングが起きやすくなります。プロは特殊演出を除いてカッピングしません。

Q3:モニターはどこに置いても同じ?
A:マイクの指向性によって「安全な角度」は異なります。カーディオイドは真後ろ、スーパーカーディオイドは127°/233°方向が基本です。


まとめ:マイクは声をデザインする楽器

マイクはただ声を大きくする道具ではなく、あなたの声をどう「届けるか」を決める音響的な楽器です。

・グリルを覆わない
・角度をつけて息のノイズを防ぐ
・距離で声の印象をコントロール
・マイクの種類を理解してモニターを配置する

これらを意識するだけで、あなたの歌は驚くほどクリアに、魅力的に伝わるようになります。声を鍛えると同時に、マイクの持ち方を整えること――それが、プロへの第一歩です。


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