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歌う動物たち|歌うのは人間だけじゃない!
動物たちの歌を聴いてみよう
「歌う」という行為は、人間だけの特権ではありません。
実は自然界には、鳥たちのさえずりやクジラの歌のように、「歌」と呼びたくなる音声コミュニケーションをする生き物たちがいます。
今回は、歌う動物界の二大スター――鳥とクジラ――に絞って、その歌の特徴や違いをじっくり掘り下げていきます。

鳥の歌──種類ごとにこんなに違う!
朝の森や街路樹で聞こえてくる「チュンチュン」「ピヨピヨ」だけでも心が和みますが、実は鳥の“歌”は種類によってまったく性格が違います。
学術的には「ソング」と呼ばれる構造化された声で、オスが繁殖期にさえずることが多いです。
サヨナキドリ:夜のソリスト
ヨーロッパで“夜の歌姫”として愛されるサヨナキドリ。別名ナイチンゲールとも呼ばれるこの鳥は、100種類以上のパターンを持つ複雑な歌を夜通し披露します。夜間に歌うのは鳥としては珍しく、静かな夜の森にこだまする旋律はまるでソロリサイタル。クラシック音楽や詩にも登場するほど人々を魅了してきました。
ウグイス:美しい節回しの名人
日本人にとっておなじみの春告鳥。特徴的な「ホーホケキョ」は、ただの鳴き声ではなく、最初の「ホー」で音を伸ばし、後半の「ケキョ」で転がるように落とす“メロディ”です。熟練のオスほどこの節回しが上手で、音程が安定していると言われます。
トラツグミ:繰り返しの作曲家
英名“ソングスラッシュ(Song Thrush)”の名の通り、繰り返しが特徴的。2〜4回同じフレーズを歌ってから次に進むため、まるで小節ごとにリフレインが入る楽曲のよう。鳥版ミニマル・ミュージックともいえるでしょう。
ライアーバード:自然界のカバーアーティスト
オーストラリアのライアーバードは、他の鳥の声はもちろん、カメラのシャッター音やチェーンソーの音までコピーしてしまう“ものまね名人”。映像記録では、人間が森で作業していた音がそのまま曲中に混じるという驚異のパフォーマンスも報告されています。
都市のスズメやカラスも“歌う”
スズメやカラスはメロディというより短いフレーズを繰り返す傾向がありますが、近年の研究では都市部のスズメは“車の騒音に負けないように”高い音域で鳴くよう変化しているという報告も。これも一種のアレンジといえるかもしれません。
このように鳥たちは種類ごとに歌のスタイルがあり、旋律の複雑さ、リズム、音域、音量まで多彩。鳥の世界はまるで音楽ジャンルの博物館です。
クジラの歌──海の底から響くシンフォニー
次は海へ。ザトウクジラの歌は、20〜30分続く長大な楽曲で、同じ海域のオスたちが“合唱”することもあります。歌のパターンは毎年少しずつ変化していき、同じ群れのクジラが同じ“バージョン”を歌うことがわかっています。これは文化的伝承と呼ばれ、人間社会における流行歌の変化と似ていると指摘されています。
音域は人間にはほとんど聞こえないほど低い低周波から、イルカのような高い音まで幅広く、まさに海の交響曲。研究者は水中マイク(水中音響レコーダー)で録音して解析し、歌の構造が「テーマ」「モチーフ」「リフレイン」のように組み合わされていることを突き止めました。
また、クジラは鳴くだけでなく、歌いながらダイナミックにジャンプ(ブリーチ)したり、尾で水面を叩いたりして音を付け加えることもあります。音楽で言えば、リズム隊が一斉に入るようなもの。海の中でライブパフォーマンスが繰り広げられているわけです。
なぜ歌うのか?生き物たちの“歌”の意味
鳥もクジラも、歌う理由の多くは繁殖とコミュニケーションです。
- 求愛・アピール:オスが自分の健康状態や遺伝的優位性を示すために歌います。
- 縄張り宣言:特に鳥は「ここは私のエリア!」と宣言するためにさえずります。
- 学習と文化:クジラの歌の変化や、若鳥が親の歌を真似て覚える現象は、音楽的な“世代間学習”と呼べるでしょう。
つまり歌は、生きるための知恵であり、コミュニケーションのツールであり、種を超えて「世界を共有する方法」なのです。
まとめ:声を持つ生命の豊かさを感じて
鳥のさえずりは、ジャンルの違う無数の曲が同時多発的に流れるフェスのよう。
クジラの歌は、海の深さとともに響く壮大な交響曲。
私たちが音楽を楽しむとき、その感覚は自然界の生き物たちとつながっているのです。
次に外を歩くとき、耳を澄ませてみましょう。どこかで小さな歌手が声を張り上げているかもしれません。そして遠い海の底では、クジラたちが今日も誰かに向けてラブソングを歌っているかもしれません。